1冊10分で読める本の要約

2017.11.09

「最も社員のモチベーションが高い企業」に学ぶホワイト企業の作り方

20171109 summary

著者羽田 幸広

ページ数240ページ

出版社PHP研究所

定価1,620円(税込)

出版日2017年04月21日

Book Review

会社はひとつの「アート」だ――本書を読んでいると、そんな感想を抱いてしまうかもしれない。
2017年3月、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「HOME’S」を運営する株式会社LIFULL(以下、ライフル)が、リンクアンドモチベーション社が主催する「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」で第1位を獲得した。
このように「最も社員のモチベーションが高い企業」という評価を得たライフルだが、本書を開いてみると、なるほど納得の受賞である。企業の「ビジョン」と「カルチャー」を徹底させるための仕掛けが、いたるところに張り巡らされているからだ。
自分がやってもらって嬉しいことをやること、やられたら嫌なことは控えること、できるだけ「やらされ仕事」ではなく「自分の意志で仕事ができる環境」をつくること、そして「一緒にいたくない人」より「一緒にいたいと思う人」と働くこと。組織としてそのすべてを実現するためには、相当の努力が必要である。だからこそ、ライフルの取り組みから学べることははかり知れない。
真っ黒に塗りつぶされ、何も描けなくなってしまった「ブラック企業」ではなく、ひとりひとりの色を鮮やかに表現できる「ホワイト企業」に会社を育てるための秘訣がここにある。人事担当者はもとより、会社経営にかかわるすべての人に読んでいただきたい一冊だ。

要約本文

経営理念

理念を明文化し、浸透させよ

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どのような組織でも、成果を最大限に発揮するためには、構成員のポテンシャルをできるかぎり発揮してもらわなければならない。そのためにまず必要なのが、「その組織がめざすもの」と「それをめざす理由」、そして「どのようにめざすのか」を明文化し、受け入れてもらうことである。ライフルではこれらを「社是」「経営理念」「ガイドライン」として明確に打ちだし、「ビジョンカード」として社員に携帯してもらうようにしている。
また、2012年からは社内から有志を集め、「ビジョンプロジェクト」という全社横断の取り組みをはじめた。部署ごとに経営理念ビジョンを策定してもらい、特に役員にはそれを徹底的に守ってもらうようにしている。加えて、自分の仕事とビジョンのつながりを感じているかをチェックする「ビジョンアンケート」を定期的に実施し、分析報告もおこなっている。このように、「ビジョン」をきわめて重視しているのが、「日本一働きたい会社」ライフルの大きな特徴といえる。

採用基準

妥協のない、最高の採用を!

会社の魂である経営理念に命を吹き込むため、ライフルではいくつもの施策をおこなっている。そのなかでも、最もインパクトが大きかったのが採用基準の変更である。
社員の行動を規定するのは価値観だ。全員が同じ価値観のもとで働くと、基本的な行動が統一されるため、生産性が高まる。逆に、価値観がバラバラのままでは、生産性は低くなってしまう。
残念ながら、人の価値観というのはなかなか変わらない。ならば、同じ価値観をもつ人を採用したほうが明らかに効率がよい。また、入社後にいかに組織デザインや人材育成を工夫しても、その人材に主体性や成長意欲がなければ効果は薄い。入社後の施策を効果的なものにするためにも、採用に力を注ぐべきである。
ライフルの場合、経営理念への共感「ビジョンフィット」と、企業文化への合致度「カルチャーフィット」をなによりも大切にしている。どれほどスキルが高くても、ビジョンやカルチャーにズレを感じたら採用しない。
このように徹底的にこだわったことで、ビジョンフィット、カルチャーフィットした人材が着実に増え、それにともなってモチベーション調査等のスコアも向上していった。

面接で注目すべきは「事実」

ライフルでは4つの採用基準を設けており、前述の(1)ビジョンフィット、(2)カルチャーフィットに加え、(3)ポテンシャル、(4)スキルフィットもチェックするようにしている。
応募者のポテンシャルやスキルフィットを確認するためには、過去の行動の「事実」を丁寧にヒアリングするのが鉄則である。「事実」を通してのみ、その応募者の行動特性が見えてくるからだ。逆に、応募者に自由に話してもらうと、事実よりも気持ちや主観の部分が強く出てしまい、特徴的な行動特性を確認できなくなるので注意が必要である。
また、面接の前後にも着目したほうがよい。特にカルチャーフィットしているかどうかについては、「事実」に関するヒアリングだけでなく、選考プロセスのさまざまなやり取りのなかで総合的に確認していく必要がある。

就職の助言をする「アドバイザー制度」

多くの学生は就業経験がないことから、就職活動に苦戦する傾向にある。そこでライフルは、良いものをもっているのにそのような状況に陥っている学生のため、選考プロセスに「アドバイザー」という段階を設けている。これは、ある程度の段階まで選考を通過した学生ひとりひとりに、採用担当者がアドバイザーとなる制度だ。ライフルの採用担当として、自社の魅力を伝えることも忘れないようにしつつ、応募者の興味のある事業や仕事を深掘りする。ビジョンや事業に共感してくれれば選考を進め、そうでなければ他社をおすすめするというわけだ。
このプロセスの間、学生は何度もアドバイザーのもとを訪れるのだが、ひとりの人事担当者が平均して担当する人数は60名ほどにもなる。しかも、長い場合は半年以上の期間ずっとおこなうため、担当者には相当な負担がかかることになる。
それでも、できるかぎり手間暇をかけ、妥協をしないことが採用活動の鉄則である。「不合格にするために採用活動をしていく」ぐらいの強いこだわりをもって採用活動にあたるべきだ。

企業文化

人事戦略の「背骨」は2つある

ライフルの経営理念は、「常に革新することで、より多くの人々が心からの『安心』と『喜び』を得られる社会の仕組みを創る」ことである。この理念を実現するためには、600人の社員全員が、今まで感じてきた「暮らしの『不』」を課題として設定し、解決する事業の立ち上げに挑戦したくなる仕組みづくりが必要だ。したがって、ライフルの企業文化や人事施策はすべて、経営理念を実現するための社員の「挑戦」を引きだすように設計されている。
社員の「挑戦」を引きだすうえで、特に重要視しているのが(1)「内発的動機づけ」と(2)「心理的安全の確保」である。(1)「内発的動機づけ」とは、自分の内側から湧きあがってくる「これをやりたい」「こうなりたい」という欲求のことを指す。熱中するものだからこそ、自発的に学ぶようになるし、成果も出てくる。一方、(2)「心理的安全の確保」とは、社員が上司やほかのメンバーに対し、自分の考えや感情を率直に伝えることができる環境のことだ。まちがったことや反対意見を述べても安全だと感じられる雰囲気をつくりだすことが重要である。
経営理念と企業文化を明確にしたうえで、これらふたつを実行する。すると、社員は自ら動きはじめてくれるようになる。

誰でも新規事業を提案できる

「内発的動機づけ」の試みの一環として、ライフルは「Switch」という新規事業提案制度を設けている。2017年2月現在、ライフルの主要グループ会社は15社あるが、そのうち5社は、この「Switch」から生まれたものだ。応募資格は正社員・契約社員を問わず、内定者や学生にも門戸を開いている。
もちろん、事業計画の立案にはスキルが求められる。そこでライフルでは、経営企画部門のスタッフによるセミナーを用意し、そこで学んでから提案書を作成できるようにしている。プレゼンテーションの場でも、社長や社外の投資家、経営コンサルタントから、レベルの高いフィードバックがあたえられ、最優秀賞には100万円、優秀賞には30万円、入賞には10万が授与される。加えて、世界有数の起業家の祭典「SLUSH」への参加費用を会社が負担する副賞もある。

感情のギャップを埋めよ

「心理的安全の確保」は人事の使命だ。思いきった意見を言えない環境では、個人の能力を十分に発揮することなど不可能である。ライフルではそうした心理的不安を取りのぞくため、さまざまな施策をおこなっている。そのうちのひとつが、4月から5月にかけて全社でおこなわれる「チームビルディングプログラム」だ。チームビルディングとは、組織をたんなる「グループ(人の集まり)」と見なさず、成果をあげる「チーム」にするための手法を指している。
ライフルではチームをつくる際、メンバー間に生じる3つのギャップ、すなわち(1)感情のギャップ、(2)ビジョンのギャップ、(3)戦略のギャップを埋めることを徹底している。なかでも感情のギャップは、その後のギャップを埋めるうえでも欠かせない大切な作業だ。
感情のギャップを埋めるとはすなわち、「仲良くなる」ということにほかならない。高い能力が不要かつ、メンバーそれぞれの長所を生かせるようなプログラムを組むことが、ライフルでは推奨されている。やることはサバイバルゲームや料理対決、スポーツなどさまざまだが、いずれの場合も上司を含めてフラットに、かつ本気で取り組むことが重要だ。

組織開発

全員がコミットメントする

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ライフルの人事部には、採用や労務、人事制度関連の業務以外にも、「組織開発」をおこなうチームがある。組織の「モチベーション状態」を網羅的に把握し、必要に応じて対処することで、組織状態を良好に保つことがその役割だ。
ライフルにおける従業員モチベーションはもともと全国平均よりも低い水準だったが、「日本一働きたい会社」をめざし10年以上かけて試行錯誤した結果、2017年にはついに「ベストモチベーションカンパニーアワード」で1位となった。
モチベーションの高い組織にするためには、人事部だけでなくトップ、役員、組織長がかならず「本気」にならなければならない。まず、モチベーション調査の結果を観ながら、会社全体のどこに問題があるかを特定する。問題のある部署を見つけたら、モチベーションを疎外している要因を定性的に把握するため、部門責任者の同意を得たうえで、該当のチームメンバーに具体的な事象や感情的なギャップがどこにあるかについて、人事がヒアリングをおこなう。
調査結果を伝えられた部門責任者には、いつまでにどんなアクションをとるかを宣言してもらう。このとき大事なのが、「マネジャー自身が解決する問題」と「職場メンバーと共に考えて解決する問題」を分けて検討してもらうことである。多くの課題は、職場メンバーのコミットメントなしに解決することはむずかしい。自部署の調査結果を受けて、自分たちのチームをより良くするために何が必要なのか、どうするべきかをメンバー同士で話し合ってもらうことが、良いチームづくりには欠かせない。

サポートははじめが肝心

ライフルではすべての社員を対象に、入社後3カ月が経ったタイミングで人事担当者が面接をおこなっている。入社前のイメージと入社後のギャップを埋めるためだ。入社後3カ月というタイミングは、歓迎イベントや引き継ぎを終え、1人で動きだしはじめる時期である。それ以上放置していると、感じていたギャップに対して「どうにもならないものだ」と諦めてしまう人が多いので注意したい。
また、新入社員が先輩社員からアドバイスを受けられる仕組みとして、ライフルでは「START」というエントリーサポートプログラムも用意している。「別の部署」の「同職種」である先輩社員がサポーターとなり、新入社員の相談に乗るという仕組みだ。こちらのサポート期間は6カ月で、食事代は会社が負担する。ライフルでは新入社員にかぎらず、中途入社の社員に対してもこのプログラムをおこなっている。中途入社者はぽつんと1人で入ってくることが多く、孤独を感じやすいためである。特に、支店に在籍する有期契約の社員に対する効果は大きく、コミュニケーションが活性化したことで、定着率の大幅アップにつながっている。

一読の薦め

日本人の仕事へのモチベーションは、国際的に見てかなり低い。ある調査によれば、「会社に貢献したい」と考えているのは、日本の全社員のうち、わずか3%だけだという。だがその数字は、けっして日本人の本質を反映したものではないはずだ。本書は、「会社に貢献した人が報われる会社」をつくるためのノウハウ集である。ここで紹介されているような施策や哲学が日本に広まり、働く人にとって魅力ある企業が増えていくことを願ってやまない。

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著者紹介

  • 羽田 幸広(はだ ゆきひろ)

    株式会社LIFULL 執行役員人事本部長。
    1976年生まれ。上智大学卒業。人材関連企業を経て2005年6月ネクスト(現LIFULL)入社。人事責任者として人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに尽力。
    2008年からは社員有志を集めた「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、2007年「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。7年連続「働きがいのある会社」ベストカンパニー選出(2011年~2017年)、健康経営銘柄選定(2015年度、2016年度)など、企業として高い評価を得るまでに導いた。

  • flier

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