1冊10分で読める本の要約

2017.10.12

より成果の出る組織をつくるにはどうすればいいのか--「その人らしい」才能開花をサポートするリーダーになる方法

20171012 summary

著者曽山 哲人

ページ数256ページ

出版社PHP研究所

定価940円(税込)

出版日2017年07月19日

Book Review

苦手を克服し、満遍なくこなせることが大事という信仰、平均や標準を重視する横並び意識。こうしたものが根強く残る日本において、「私の強みはこれ」と明確に答えられる人は、数少ないのではないだろうか。しかし、ずば抜けた個性を発揮し躍進する企業のニュースを見るにつけ、組織やチームを率いる人たちは気づき始めているはずだ。各人の強みを活かすことが、個人の総和以上の組織力を生み出し、真に生産性を向上させる原動力であることを。
著者は、サイバーエージェントの人事責任者として同社の躍進を支え、社内外の「成果を出し続ける人」をつぶさに観察してきた。一人ひとりが自分の強みに気づき、各人の強みをかけあわせて、より成果の出る組織をつくるにはどうすればいいのか。この課題と向き合い続けてきた著者ならではの、才能開花を促す仕組みづくりやコミュニケーションの極意、才能を解き放つためのマネジメントのポイントが本書に凝縮されている。
なお本書は、クラウドファンディングを活用したサイバーエージェントとPHP研究所の共同プロジェクトにより誕生した。支援金額は232万円となり、目標金額を大幅に超えた。この事実からも、「強みを活かす」というメッセージへの強い共感が見てとれるだろう。
「弱みつぶし」の人材育成は、その人らしいリーダーシップの発揮という観点においてはマイナスに働く。むしろ、隠そうにも隠しきれない「その人らしい」才能開花の支援や投資をすることが、人事の役割だという。人を育てることの本質を知りたいのならば、手に取るべきは本書である。

要約本文

なぜ強みを活かすのか

人事の役割はメンバーの「才能開花」

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個々の才能を開花させる、つまり、一人ひとりの力を引き出すことで、その組織やチームを、現状よりもはるかに強くすることができる。これは生産性を向上させるうえでも重要な考え方だ。これからは企業間で「才能開花競争」が始まる。労働人口が減ることで、企業は、より少ない人数で大きな成果を出すことをめざさなければならない。すると、本人の可能性を見極め、それが最大限発揮されるような支援や投資を惜しまない会社だけが、永続的に成長できるようになる。
人事の役割は、個々の才能、つまりその人ならではの強みを見つけて伸ばし、活かすことである。具体的には、大きな仕事を任せたり、対話によって背中を押してあげたりするなど、本人が自分の強みを発揮しやすい環境をつくるとよいだろう。
人は「強みの押し付け」をする傾向にある。中でも、過去に成功体験を積んだリーダーは、チームのメンバーに「自分と同じ仕事のやり方で成果を出してほしい」と無意識に感じてしまいがちだ。しかし本来なら、才能は誰しも異なっているため、自分とは違うという前提で、才能の活かし方も変えていかなければならない。

弱みを見せると強みが活きる

自分の弱みを認めて、それを周囲に伝える。すると、弱みを認める余裕ができ、強みを活かすことに力を注げるようになる。不得意な分野を認めるかわりに、自分ががんばることをきちんと周囲に表明することが大事だ。
弱みを直すことに多くの時間を費やすと、その分、自分の強みを発揮する時間が減ってしまう。仮に「強みを発揮しているチーム」と、「弱みを直しているチーム」があったとしよう。どちらがより永続的に大きな業績をあげられるかというと、前者である。なぜなら、強みを活かしたほうが本人も楽しいし、前向きに仕事に取り組めるからだ。すると、一人ひとりに粘りが出て、成果が上がりやすい。成果を早く確実に出したいのなら、弱みを直すより、強みを伸ばすことに尽きる。
適材適所を実現するには、その仕事をおこなったときに「一番成果を出す人に任せる」とよい。リーダーには、メンバーにそれぞれの強みを発揮してほしいと、期待をかけていることを伝える役割がある。メンバー自身が「私はこれを期待されている」と明確にいえる状態になれば、強みが発揮されやすくなり、チームとしてより大きな成果を出せるにちがいない。

強みを知る

強みの源泉は自分の大事にしている価値観

強みを知るうえで有効なのは、自分の大事にしている価値観に向き合うことである。価値観を可視化するために、著者は、面談やチームビルディングの研修などで「価値観ナインブロック」というシートをよく使っている。3×3の9つのマスをノートなどに書き出し、真ん中のマスに自分の名前を入れる。次に、残りの8つのマスに、「これまで大切にしてきた考え」、「家族からよく言われてきたこと」、「自分の信条」を、3分程度で書き出していく。
内容は「常に笑顔」、「創造力」など人によってさまざまだ。実は、この列挙された価値観自体が、自分の強みの源泉である。もし「常に前向き」と書いていれば、この指針を何度も自分に言い聞かせ、体感していることの現れであり、それだけで人とは異なる競争優位が生まれている。
強みの源泉を列挙したら、「力を入れてみるもの」に1つだけ〇をつけ、日常生活でどう意識して使うのかを、ナインブロックの余白に書き込んでみよう。こうして意識的に強みを活かそうと実践することで、強みはますます洗練され、磨かれていく。

月イチ面談で強みが見える

サイバーエージェントでは、月に一回、リーダーがメンバーと一対一で面談する「月イチ面談」を推奨している。ポイントは強制をしないことである。形式的な面談や、リーダーが一方的に話すだけの面談では、かえってマイナスになりかねない。
では、月イチ面談でリーダーはメンバーにどんな質問をしたらいいのか。著者は次の3つを薦めている。「先月の成果を振り返ること」「今月の成果のための作戦を話すこと」「時々は中長期のキャリアを聞くこと」だ。これらを定期的に聞くことで、両者の相互理解が進み、共通項が増えていく。ひいては、互いの好きなことや得意分野がわかり、強みが見つけやすくなる。

強みを伸ばす

発信するとチャンスが増える

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情報を発信する人には、自分の強みを発揮するチャンスが多く舞い込んでくる。SNSやブログなどで意思を表明すると、賛否両論のリアクションがくる。これにより、自分の考えが他者に届いていることを実感でき、新たな学びが増えていく。
情報発信のポイントは次の3つである。1つ目は、自分の考えや意見を、目で見える文字にすることだ。文字にすると、自分ならではの表現が生まれ、考えが脳に定着しやすくなる。
2つ目は、他人からのリアクションが得られる場で発信することである。反響があれば、やりがいにつながり、長続きしやすい。
そして3つ目は、趣味などの仕事以外の自分について発信することである。そうすれば、興味のある分野と近いプロジェクトが立ち上がったときに、参加してみないかと声がかかる確率が上がるだろう。
多くの人に見られる場所で考えや意見を発信していると、自然と言葉が磨かれていく。サイバーエージェントの社長、藤田晋氏は、「言葉を開発しよう」と呼びかけている。言葉の開発とは、人の記憶に残り、人の心を動かす言葉をつくるという意味だ。ありきたりな言葉ではなく、印象に残る言葉を使うことで、聞いた人の考え方も影響を受けていく。
例えば、同社では、人材の成長を語るうえで欠かせないコンセプトを表すために、「決断経験」という言葉が頻繁に使われている。一般的な用語である「決断」と「経験」という言葉をもとに、オリジナルの言葉を開発することで、「決断を下す経験を積むことが大事」という、自社独自の考え方を端的に示している。こうした「刺さる言葉」を生み出すには、実際に使ってみて相手の反応を確かめることが重要であり、これによって、さらに言葉に磨きをかけられる。

言わせて、やらせる

サイバーエージェントでは、「言わせて、やらせる」ことを大事にしている。自分で「やる」と言った瞬間、「やらなければ」という覚悟が生まれる。すると実行力が高まり、成功確率も上がる。もし失敗しても自分で下した決断であるため、反省を次に活かしやすい。これは主体性を発揮する風土づくりにも役立つはずだ。
ただし、「言って、やった後に失敗したら、評価が下がるのではないか」という恐れが生じるため、それを軽減することも必要となる。自ら手を挙げて新しい挑戦に踏み出した人を支援し、その成功事例を増やしていく。同時に、失敗した人に対し、経営幹部がねぎらいを見せることも、「言わせて、やらせる」文化を定着させるうえで大切な配慮となる。

セカンドチャンスの重要性

「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」。これはサイバーエージェントのミッションステートメントである。強みを活かすには、組織としてセカンドチャンスを与えることが大事だと考えられている。なぜなら、セカンドチャンスがあってはじめて、失敗への恐れが減り、チャレンジしようと行動する人が増えるからだ。
たとえ失敗しても、本人の自信がある程度復活した段階でセカンドチャンスを与え、失敗経験を糧に成功できる流れをつくる。そうすれば、普通の社員も「私にもできるかも」と一歩を踏み出しやすくなるはずだ。
また、何かやりたいことがあるなら、とにかく意思表明をするほうがよい。肯定されれば応援を得られたことになるし、否定されたら、その理由を尋ねることで改善点を学べる。第三者の脳を借りられるという、「フィードバック特権」は、意思表明をした人だけに与えられる。フィードバックによって内省が進み、その分成長が加速するのは大きなメリットだ。

強みを活かすマネジメント

抜擢を成功させる秘訣

サイバーエージェントは、抜擢をして思い切って仕事を任せ、組織と人の両方が急成長することをめざしている。抜擢するポジションの課題を見極め、その課題を最も解決してくれそうな人を選んでいる。
では、優秀な人材を発掘し、抜擢を成功させる秘訣はあるのだろうか。まずは、経営陣が多くの人物について詳しく知っていないといけない。社内のどこに、どんな才能が埋もれているかはわからないからだ。
サイバーエージェントでは、経営陣ができるだけ多くのメンバーと会食に行き、直接対話をするようにしている。すると、抜擢の際に、経営陣が「この人に任せれば成功しそう」と、よりよい意思決定をしやすくなる。メンバー側にも、自分の強みを経営陣に知ってもらう機会が増えるというメリットがある。このように、経営陣がメンバーに歩み寄り、話す機会を増やすことが、人材発掘のカギとなる。
また、抜擢した人の才能を開花させるには、上司はできる限り放置したほうがよい。抜擢された人が伸びない原因の多くは、上司による過保護のせいだといえる。自分で決めて、実行する権利を与えずに、上司がすぐに具体的なアドバイスや指示をすると、抜擢された人は伸びない。抜擢の一番の効用は、裁量権を渡すことだ。もちろん、トラブルが起きた際には上司が相談にはのる。しかし、大事なのは「どうしたいの?」「どういう着地にしたい?」と尋ねるにとどめて、本人に解決策を発言してもらうよう促すことだ。

障害のイメトレをさせる

抜擢した人の相談にのる際に、著者がよく行うのは「障害のイメトレ」である。障害のイメトレとは、抜擢された人の意思決定を尊重する前提で、想定外のトラブルが起きたときにどうするかと、その人に投げかけることを指す。
例えば、「こういうことが起きたときはどうするのか」「こういうトラブルの可能性があるよね」と、質問を次々と投げかけ、解決策を考えさせる。これをくり返すと、抜擢された人の決断力が少しずつ磨かれていく。自ら決断し、その決断の結果を受け入れて、次の決断に活かすことでしか、決断力は育たないといっても過言ではない。
こうした工夫により、抜擢を成功に導き、その人らしいリーダーシップの発揮を促すことができる。

一読の薦め

要約で取り上げた内容以外にも、強みを活かすための面談の問いかけの工夫や、「議題は人だけ」の会議など、才能を発掘し、強みを伸ばすための同社の秘訣が充実しており実に素晴らしい。
また、人事評価の変革を推し進めるなど、その人材育成の取り組みに注目が集まっているGEジャパンの人事部長や、言わずと知れた人材輩出企業、リクルートホールディングスの人事統括室長との対談も、強みを活かす実践例として学びに満ちた内容となっている。人材育成に関わる方の必読書としてお薦めしたい。

より成果の出る組織をつくるにはどうすればいいのか--「その人らしい」才能開花をサポートするリーダーになる方法この記事が気に入ったら
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著者紹介

  • 曽山 哲人(そやま てつひと)

    株式会社サイバーエージェント取締役 人事統括 上智大学文学部英文学科卒。
    株式会社伊勢丹(現・株式会社三越伊勢丹ホ ールディングス)に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事したのち、1999年株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。現在は取締役として採用・育成・活性化・適材適所の取り組みに加えて、『最強のNo.2』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『クリエイティブ人事』(光文社)など複数の著作出版やブログ「デキタン」をはじめとしてソーシャルメディアでの発信なども行っている。

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