1冊10分で読める本の要約

2017.09.28

要約で学ぶ『なぜ、残業はなくならないのか』常見 陽平

20170928 summary

著者常見 陽平

ページ数256ページ

出版社祥伝社

定価864円(税込)

出版日2017年04月10日

Book Review

「長時間労働の是正」は、多くの国民が注目しているトピックである。安倍内閣が「働き方改革」に取り組んでいるさなか、痛ましい「電通過労自死事件」が起こり、世論も大きく動いている。電通においては夜10時以降の残業は禁止になり、政府でも労働時間規制を強化することが検討されているが、本当にそれで、企業にはびこる長時間労働は是正されるのだろうか。サービス残業が誘発されるだけではないのか。そもそも日本社会にこれほどまでに残業が根づいているのはなぜなのか。
本書で著者が述べているように、残業に関する議論は「意識を変えるべきだ」などの感情論に流れがちだ。残業の理由としても、わかりやすさから、上司との関係が取り沙汰されることが多い。また、「日本人は働き過ぎだ」「生産性が低い」という、いつのまにかすりこまれたステレオタイプ的な物の見方も根強くある。著者は、データを読みときつつ、根拠の薄弱なそうした議論を一掃し、「残業の合理性」や、「日本社会が残業ありきで設計されていること」を指摘する。その上で、職場で人が死ぬような社会には断固としてNOをつきつけ、このような現状にどう立ち向かえるのか、政府によってリードされている「働き方改革」は有効なのかを論じている。
一人の労働者として、長時間労働について考えるとき、本書は必ずその思索の助けとなってくれるだろう。

要約本文

日本人と残業の関係

日本の労働時間

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著者はまず、日本人の労働時間について、ファクト・データの確認を行なっている。
『データブック国際労働比較2016』からは、メディアで報じられているように、単に「日本人は働きすぎ」とはいえない現状が見えてくる。他国と比べて、日本の労働時間は長いが、アメリカやイタリアなどの労働時間も長い。日本の労働時間「だけ」が長いわけではないのだ。
また、日本における一人当たりの総労働時間は、1980年代から現在にかけて、労働基準法の改正などの影響を受け、徐々に減少している。ただし、総務省の「労働力調査」によれば労働時間の短い非正規雇用者の割合は増え続けており、そのことが一人当たりの総労働時間に影響を与えていることが推察される。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」を見ると、このことはさらに明確になる。パートタイム労働者の割合が増えている一方で、一般労働者の総実労働時間はほぼ横ばいだ。つまり、正規雇用者の労働時間は改善されていないのである。加えて、日本の労働時間を他国と比較したときに明確なのは、日本は長時間労働者の比率が高いことである。性別ではとくに男性、業種別では運輸業、郵便業、建設業、教育、学習支援業に長時間労働者が多い。

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著者紹介

  • 常見 陽平

    働き方評論家、千葉商科大学国際教養学部専任講師。1974年生まれ、北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より現職。
    専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演を行なう。著書に、『僕たちはガンダムのジムである』(日経ビジネス人文庫)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『「意識高い系」という病』(ベスト新書)、など多数。

  • flier

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