1冊10分で読める本の要約

2017.06.23

起業を志すなら必読!『逆説のスタートアップ思考』を10分で読める要約で

20170623 startup

著者馬田 隆明

ページ数272ページ

出版社中央公論新社

定価886円(税込)

出版日2017年03月10日

Book Review

短期間で爆発的成長を遂げる組織体、「スタートアップ」。AirbnbやUberといったスタートアップのサービスが世界を席巻し、日本でも企業間のオープンイノベーションやスタートアップとの協業が増えるなど、まさにスタートアップ花盛りだ。
ところで、スタートアップの成功確率を著しく上げる独特の思考法があるのをご存知だろうか? その名も「スタートアップ思考」。この思考をアイデア、戦略、プロダクトの観点から体系的に学べるという、起業を志す方の待望の書が本書だ。
スタートアップ思考のキーワードは「逆説的で反直観的」というものだ。例えば、「優れたアイデアとは不合理なアイデア」、「競争したら負け犬」、「多数の好きより少数の愛」などと、スタートアップの成功の裏には、常識を覆す真実が数多く存在する。こうした真実を知っておくことが、不確実性を逆手にとり、運をも味方につけて、短期間のうちにイノベーションを起こすうえで欠かせない。
東大産学協創推進本部で講義や起業支援を行っている著者の解説は、実に本質的で読む者の好奇心に火をつける。稀代の投資家ピーター・ティールなど、スタートアップ思考の祖と呼ぶべき人物の考えや、具体的な成功事例をもとに、意外な成功の逆説が浮かび上がっていくプロセスはスリリングそのものだ。スタートアップをめざす人が本書を見逃すと、「あのとき知っておけばよかった……!」と後悔する瞬間が必ずや訪れるだろう。爆発的な成長の秘密兵器、スタートアップ思考の真髄を味わっていただきたい。

要約本文

スタートアップとは?

健全な社会のためのスタートアップ

スタートアップとは、短期間で急成長をめざす一時的な組織体を指す。いくら新興企業であっても、着実な成長をめざすものはスモールビジネスに位置づけられる。また、ビジネスの成長の上限が決まっているならば、いくら先端的なテクノロジーを駆使していても、スタートアップとは呼べない。つまり、スタートアップかどうかの判断基準は、急成長をめざしているかどうかに尽きる。
現在、スタートアップは破竹の勢いで成長し、国や大企業、ベンチャーキャピタルからの支援も増えてきている。その結果、成功するスタートアップを生み出すための仕組みや考え方が体系化されつつある。
挑戦や失敗を許容できない空気が日本に広まる前に、スタートアップによるイノベーションが増えれば、より健全な社会が実現でき、次世代に希望のバトンをつなげられる。こうした著者の思いのもと、本書ではスタートアップの初期において重要な「反直観的」な真実を明らかにしていく。

アイデア

「不合理」なほうが合理的

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スタートアップにとっての優れたアイデアとは、不合理なアイデアである。もしも合理的な優れたアイデアなら、急成長が見込めるため、Googleのような巨人たちにたちまち攻め込まれてしまうだろう。
そこで、限られたリソースでの戦いを強いられるスタートアップは、他人から見ると不合理、つまり「一見悪いように見えて実はよいアイデア」を選ぶ必要がある。これをピーター・ティールは「賛成する人がほとんどいない大切な真実」と呼ぶ。ただし、現実には「ただ単に悪いアイデア」がほとんどであることを心に留めたい。

難しい課題のほうが簡単

もう一つの反直観的な事実は、「難しい課題のほうがスタートアップは簡単になる」というものだ。これを物語る事例は、社会的課題を解決する事業のスタートアップや、高度な技術を要するハードテックスタートアップである。
彼らが立ち向かうのは、直観的にはつい避けたくなるような難題だ。そうした難題を解決しようとする事業には、社会的意義に共感した人たちからの支援が押し寄せるだけでなく、そのミッションに心惹かれた優秀な人材が集まってくる。また、技術的に難しい課題を達成しようと、優れた技術者はいっそう奮い立たせられるはずだ。
周囲を巻き込むうえでのポイントは、大胆でありながらも、ぎりぎりのラインで実現可能なアイデアだと明示することである。

説明しにくいアイデアを選ぶ

スタートアップのよいアイデアは、人に説明しにくい。一般には一言で表せるほどシンプルで、わかりやすいアイデアが好まれる。しかし実際には、シンプルさとわかりにくさは両立し得るのだ。例えば、配車サービスUberは「見知らぬ他人の車をスマートフォンで呼び出して相乗りする」とシンプルに説明できる。ただし、そのコンセプトが画期的であるために、このサービスが登場する前ならば、その内容は理解されにくかっただろう。
よいアイデアは既存のカテゴリにあてはまらないことが多い。だからこそ顧客の真のニーズをとらえた新しいカテゴリを創出できれば、そのアイデアは急成長の種になってくれる。
こうした説明しにくいアイデアを探すには、一時的な流行を追うのではなく、多くの人が見落としている課題に「気づく」ことが第一歩となる。チャットツールSlackを開発する発端となったのは、創業者が膨大な量のメールが届く状況において、このシステムの破綻に気づいたことである。よいアイデアは、考えてひねり出すものではなく、自分の体験から生まれてくるものであり、こうした「気づき」は周囲に転がっているはずだ。

スタートアップは「べき乗則」である

通常の競争においては、1位と2位は僅差でゴールすることが多い。しかし、スタートアップでは例外的に、1位か2位かで数十倍の差が生じる。2012年にピーター・ティールが投資したFacebookが上場し、彼はなんと1000倍以上のリターンを得たという。しかも、Facebook一社の上場で生まれた利益は、その年のベンチャーキャピタル業界全体の利益の35%値するほど、ずば抜けていた。よい投資家はヒットではなく、ホームランをめざすべきだと心得ている。そのため、スタートアップがベンチャーキャピタルから資金を調達し、一気に成長をめざすなら、大きく化ける可能性を秘めたビジネスを追求することが重要となる。
これまで述べてきたように、スタートアップのアイデアは反直観的で、周囲の理解を得がたいため、ことごとく否定されがちだ。しかし、だからこそ必ず成し遂げたいビジョンやミッションといった拠り所を起業家が持っているかどうかが、事業の成否を分けるといってよい。例えばGoogleは、初の資金調達に成功するまでに350回ものピッチ(投資家へのプレゼン)を行ったという。状況に応じて臨機応変に対応しながらも、コアの部分だけは信念をぶらさず、粘り強く続けていく。こうした信念は多くの人を巻き込む原動力にもなってくれる。

戦略

競争に勝つために競争から抜け出す

急成長を目論むスタートアップはどんな戦略を構築すればいいのか。そのカギは競争を避けて「独占」を狙うことにある。
一般的に、競争によって消費者はより安く、よりよい商品を手にすることができるため、競争は良いものとされている。しかし、スタートアップにとっては、競争の激化は長期的に利益を出せなくなる脅威そのものだ。逆説的だが、競争に勝つにはどうすれば競争から抜け出せるかを考えなければならない。

小さくて急成長する市場を狙え

独占を実現するための戦略の肝は「素早さ」である。ピーター・ティールは他社が参入する前に一気に独占するために満たすべき5つの条件を、次のように述べている。小さな市場を選ぶこと、少数の特定の顧客が集中していること、ライバルがほとんどいないこと、顧客に刺さり続ける仕組みがあること、そしてスケールのために必要な限界費用が低いことである。
とりわけ「小さな市場を選ぶ」ことは、一見すれば不合理に感じられる。しかし、最初から大きな市場にいる顧客にリーチしようとすると、マーケティング費用がかさむうえに、スタートアップの先進的な製品に親和性の高い初期の顧客はほとんど望めない。さらには、大きな市場であればあるほど、差別化が難しく利益率が激減する。一方、小さな市場なら大企業が参入しづらく、独占にかける時間が少なくて済む。
ただし、市場選びのポイントは小さくてニッチであると同時に、急成長する市場であることだ。iPhoneが登場した2007年当時は、アプリストアも少なく、スマートフォンの市場が伸びることに懐疑的な人も多かった。しかしそこでいち早くiPhone向けのアプリをつくった企業は、スマホという市場とともに急成長を遂げた。このように、「今は小さくても短期間で急成長するような市場を見つけて、そこに賭ける」という戦略は、実はスタートアップにとって至極合理的なのだ。

プロダクト

人が欲しがるものをつくる

スタートアップの多くが失敗する原因は、顧客の欲しがる製品をつくれなかったことに尽きる。ここからは、不合理なアイデアと戦略を、よいプロダクトに落とし込むためのポイントを一部紹介していく。
リリース後に脚光を浴びた製品ですら、ほぼ必ず勢いが一気に失速し、「悲しみの谷」へと向かい、そのまま潰えてしまう運命にある。とある100以上のスタートアップの失敗を分析した調査によると、最大の理由は「市場にニーズがなかった」からだという。大多数のスタートアップが狙う市場は、「これから伸びる」とされる市場であるため、真のニーズがあるかどうかは不確実である。だからこそ、「人の欲しがるものをつくる」ことがスタートアップの最重要事項なのだ。
また、「製品」以外の要素、例えばセールスやサポート、コピーライティングといった、顧客と会社をつなぐ要素も含めて「プロダクト体験」と捉えてみる必要がある。より広い概念でとらえると、製品以外の要素で顧客にハイクオリティな体験を提供でき、大企業を凌駕しやすくなるからだ。
こうしたプロダクト体験を「仮説」と捉えることを著者は推奨する。入念な仮説検証を繰り返すことで、顧客の課題と自分たちの提供する解決策がフィットするか、といった不確実なリスクを減らせる。注意すべきなのは、顧客自身も自分のニーズをよく理解できていないという点だ。そのためプロダクト体験の設計においては、顧客の声の裏に潜む、本当の欲求をとらえる必要がある。

多数の好きより「少数の愛」

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一般的には、多くの人から好かれる製品をつくるべきとされている。しかし、スタートアップ初期においては、多数の人からほどほどに愛される製品ではなく、少数の顧客から深く愛される製品をつくるべきだ。最初に少数の熱狂的ファンを獲得できれば、彼らが長期的に顧客になってくれるだけでなく、プロダクト体験の改良に役立つフィードバックを提供してくれる。
少人数の顧客に愛されるものをつくるための秘訣は、シンプルで実用可能なものを素早くローンチ(リリース)することに尽きる。ニーズがあるかを検証して、顧客のフィードバックをもとに改善することが求められる。

あえてスケールしない

著者がスタートアップに推奨するのは「スケールしないこと」である。実はこれが後の急成長を支えてくれる。
フードデリバリーサービスのDoorDashは、リリースからしばらくの間、創業者たちだけで注文の受付や配達を行っていた。あえてスケールしないことで、創業者は自社のすべての業務に精通することができ、スケール時にどんなシステムや人材が必要なのかを理解できたという。さらには、スケールしていないからこそ実現できる丁寧なサポートによって、熱狂的な顧客を獲得できるのもメリットの一つだ。
初期段階の製品で測定すべき重要な指標は、継続率である。いくら新規顧客を獲得しても、継続して使ってもらわなければユーザー数は増えない。また、新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するためのコストの5~25倍に相当するため、非効率極まりない。もちろん、初期に使ってくれる熱心な顧客ですら離れていく製品では、新しい顧客の心はつかめないだろう。こうした観点から、継続率で顧客からの「愛」を測ることが望ましい。

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著者紹介

  • 馬田 隆明(うまだ たかあき)

    1984年生まれ。東京大学産学協創推進本部、東京大学本郷テックガレージ・ディレクター。University of Toronto卒業後、日本マイクロソフト株式会社にてVisual Studioのプロダクトマネージャ、テクニカルエバンジェリストとして数多くのスタートアップを対象に、技術面とビジネス面での支援を行う。現在は東京大学にて学生や研究者のスタートアップ支援活動に従事。

  • flier

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