1冊10分で読める本の要約

2016.10.03

「営業」を根本から見直す!本当に成果を出す営業タイプは●●ができる

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著者マシュー・ディクソン、ブレント・アダムソン 著/三木 俊哉 訳

ページ数291ページ

出版社海と月社

定価1,944円(税込)

出版日2015年11月02日

Book Review

近年、商品を単体で売るプロダクト営業は廃れ、複数の商品やサービスを組み合わせて、顧客の抱えている課題を解決するソリューション営業が主流となった。しかし「ソリューション」の売買は、大規模で複雑なものとなりがちである。結果、売り手は営業に苦戦し、買い手はリスクを回避しようと慎重になり、取引はなかなか成立しにくくなった。
「どんなときでも成果を出す販売員は、何が違うのか?」。そんな疑問から出発した調査は4年間、90社、6000人にもおよび、これまでの「営業」の議論を大きく覆した。顧客と良好な関係を築く販売員が最も成果を上げるという従来の考えは迷信に過ぎず、本当に成果を上げていたのは、ときに顧客にプレッシャーを与える「チャレンジャー」タイプの販売員だったのだ。半信半疑でページをめくるが、調査結果は確かな数値とエピソードに裏打ちされており、自身が過去に受けた「営業体験」と照らしても、「こんな販売員と取引をしたい」と思わせられるものだった。
本書では「チャレンジャー」の能力が丁寧に読み解かれ、どうすればその技術を組織に再現できるかが記されている。B2B営業の例が中心だが、「チャレンジャー」の考え方やテクニックは、B2Cでも、さらには営業ではなく部署間のやりとりにも使えるものだ。確かに日々の仕事の中では、だれかに自分のアイディアの「営業」をかける機会は少なくない。そんなときにも必ず役立つ考え方が満載だ。営業職の人だけでなく、ありとあらゆるビジネスパーソンにお薦めしたい1冊である。

要約本文

ハイパフォーマンスを生む販売員になるためには?

「関係構築」タイプの販売員は、成果を出せない

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2009年初頭、世界を襲った不景気は、「営業」というものを考え直す大きな契機となった。顧客が買い渋り、小さな契約すら成立しにくくなった中でも、着実に成果を上げる販売員がいたのだ。著者は彼らの特徴を知るために、販売員の生産性についての調査を始めた。すると、これまでのイメージを大きく覆す結果が出た。
まず、すべての販売員は次の5タイプに分けられることがわかった。
・ハードワーカー(勤勉タイプ)
・チャレンジャー(論客タイプ)
・リレーションシップ・ビルダー(関係構築タイプ)
・ローンウルフ(一匹狼タイプ)
・リアクティブ・プロブレムソルバー(受動的な問題解決タイプ)
これら5タイプの販売員は、いずれも平均的な成果なら十分に上げることができる。しかしハイパフォーマンスを上げることができるのは、一部のタイプに限られていた。
従来販売員のあるべき姿とされていたのは、3つめの「関係構築」タイプである。彼らは顧客との間に友好な関係を築き上げ、緊張を解きほぐして契約に結びつける。しかし調査の結果わかったのは、この「関係構築」タイプの販売員の中にはハイパフォーマーが極端に少なく、全体の7%を占めるにすぎないということだった。
その傾向は、営業内容が複雑になればなるほどより顕著になる。近年では、商品を単体で売るプロダクト営業はほぼ廃れ、複数の商品を組み合わせて売るソリューション営業が主流になっている。「関係構築」タイプはこうした状況下では、ほとんど力を発揮できない。

「チャレンジャー」になれ

逆に力を発揮したのは、「チャレンジャー」タイプの販売員たちだった。彼らは「関係構築」タイプとは対照的な特徴を持つ。「チャレンジャー」は顧客との間に建設的な緊張感を築き、ときには厳しく決断を迫ることもある。しかしその振る舞いによって、彼らは顧客からの信頼を得て、景気の好不況にかかわらず成果を出す。さらに、ソリューション営業は彼らの独擅場だ。複雑な販売環境でのハイパフォーマーのうち、実に54%が「チャレンジャー」なのである。
もちろん「チャレンジャー」だけが高いパフォーマンスを出せるというわけではない。次いでハイパフォーマーの比率が高いのは、「一匹狼」タイプの販売員だ。しかし彼らはルールにとらわれずに自由に行動しており、その特徴を再現することは難しい上、管理が難しい。そのため、組織の中に「チャレンジャー」のノウハウを根づかせることが、営業成績を向上させるもっとも効果的な方法となる。

「チャレンジャー」の能力は「指導」「適応」「支配」

顧客にはインサイトを「指導」せよ

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「チャレンジャー」の能力は、「指導」「適応」「支配」の3つに大別できる。このうち「チャレンジャー」をほかの販売員と差別化する要因となるのは「指導」だ。「チャレンジャー」は、顧客が市場で戦うためのインサイト(知見)を教え授けることができるという点で、ほかの販売員と決定的に異なっている。
著者らが行った、顧客がB2Bの売り手に何を望むかの調査によると、顧客が最も重視するのは「営業体験」だった。もちろんブランドや製品、サービスも重要だが、それらは顧客ロイヤルティの38%にとどまっている。顧客は「どこの会社の製品も同じ」だと思っているのだ。だからこそ、どのような「営業体験」を提供できるかが、顧客に自社を特別なものとして扱ってもらえるかの分かれ目となる。
顧客が価値を置く「営業体験」の項目を見ていくと、「市場に対する独自の価値ある視点を提供してくれる」「さまざまな選択肢を検討する助けになる」といった内容が並ぶ。つまり顧客はなにかを「買いたい」のではなく、なにかを「知りたい」のだ。
従来の販売員は、顧客のニーズを引き出す質問力を鍛えてきた。しかし実は、顧客は自分自身のニーズを自覚していない可能性がある。だとしたら、顧客のニーズを尋ねるのではなく、ニーズを教える必要がある。求められているのは、一流の質問者ではなく、一流の教師としての振る舞いだ。

「商談直結型の指導」をしよう

顧客を指導するといっても、無料のコンサルティングをするわけではない。必要なのは契約を成立に導く指導である。それを著者は「商談直結型の指導」と呼ぶ。
「商談直結型の指導」にはいくつかのルールがある。まず重要なのは、「自社ならではの強みにつながること」だ。どんな立派な問題提起をしようと、それが自社の製品で解決不可能な問題であっては意味がない。そして2つめは、「顧客の仮説を覆すこと」だ。指導という以上、顧客が知らない新しい世界観を示す必要がある。このとき、顧客から「おっしゃる通りです!」と言われてしまっては失敗である。引き出すべきは、「そんなことは考えもしなかった」という反応だ。「チャレンジャー」は、同意ではなく内省を促すことによって顧客を引きつける。さらに、「行動を促すこと」「他の顧客への拡張性があること」といったルールも踏まえて「商談直結型の指導」はできあがる。
顧客との指導的な会話にも、6つのステップがある。重要なのは、いきなり自社のソリューションの話をしないことだ。まずは、市場や競合他社の抱えている課題をいくつか取り上げ、「界隈のことをわかっている」ことを伝えて「①地ならし」をする。続いて、顧客がまだ気づいていない新たな視点を提示し、価値観を「②再構成」する。そのあとは②で再構成した価値観を「③裏づけ」、さらに話術によって「④心をゆさぶる」。そこまでで顧客の心をつかめたら、いよいよ「⑤新しい方法の提示」だ。だがここでもまだ、自社の話はせず、あくまで「解決策」の話にとどめたい。その後、満を持して「⑥ソリューションの提示」で、自社がそれを競合他社のどこよりも首尾よく提供できることを約束しよう。顧客が⑤の解決策に十分納得していれば、⑥は労なく受け入れられるはずだ。
「商談直結型の指導」の肝は、②の「再構成」である。顧客が自分でも気づいていない問題(しかも、自社が競合他社よりもうまく解決できるもの)を見つけだし、提起できるかどうかにすべてがかかっている。

顧客から「幅広い支持」を得よ

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景気の悪化に伴い、顧客はますますリスクを回避する傾向が強まった。意思決定をする立場の者は、取引先を決めるときにも、社内のコンセンサスをもっとも気にかける。そのため販売員に必要なのは、意思決定者に影響を与えるキーマン=インフルエンサーに的確にアタックし、共感を得る「適応」の能力である。
従来のモデルでは、販売員はインフルエンサーから社内の内情を聞き出し、それを元に意思決定者に営業をかける、というように、情報は「インフルエンサー→販売員→意思決定者」の順で流れていた。
しかし「チャレンジャー」の営業モデルでは、情報は「販売員→インフルエンサー→意思決定者」の順で流れる。まずインフルエンサーと接触し、インサイトを提供する。そこでインフルエンサーに気に入ってもらえれば、おのずと意思決定者に口を聞いてもらえるはずだ。社内のコンセンサスを何より重視する意思決定者にとっては、インフルエンサーの推薦があることは、決断の大きな後押しとなる。
この変化によって、販売員はより多くの顧客と会って話をする必要に迫られる。ここで重要なのは、一人ひとりの役割に応じたメッセージを使い分けることだ。業界や会社だけにとどまらず、それぞれの役割や、個人の目標・目的までに適応したメッセージを発信することができれば、価値ある情報を提供する販売員だと確信してもらえるだろう。

営業プロセスを「支配」せよ

「チャレンジャー」に特徴的な能力の3つめが「支配」である。これはこれまでの「関係構築」タイプの販売員と最も対照的な特徴だ。緊張関係を嫌う「関係構築」タイプとは異なり、「チャレンジャー」は、お金の話をいとわず、また顧客に「無理強い」をすることができる。「支配」は契約の段になって初めて行われるものではなく、「商談直結型の指導」の最初の段階から行われなくてはならない。そうしないと、顧客はインサイトだけを受け取って、最後にはいちばん安い業者から買う、という行動に出かねないからだ。
「支配」という言葉が誤解を招きやすいが、これはあくまで主導権を握れという教えであって、顧客に対し攻撃的になれということではない。それに販売員は、たとえ命令を受けたとしても、実際に顧客に攻撃的に接することはほとんどない。せっかく築き上げた関係を壊したくない、良好なうちに契約をまとめてしまいたいという気持ちが、ついつい販売員を受動的にしてしまうのだ。
それでも顧客を「支配」しようとする勇気を持つためには、顧客に提供する価値に、絶対の自信がなくてはならない。提供するインサイトや自社の製品が意義深いものだという確信があれば、安易に情報だけを提供したり、見返りのない値下げに応じたりすることはなくなるはずだ。「顧客にとって何が重要かを再確認する」「値下げによって何を実現したいのかを問う」といったテクニックを駆使して、顧客の関心を価格から価値に引き戻すのが「チャレンジャー」の交渉術である。

「チャレンジャー・セールス・モデル」を実行するために

組織を挙げて対応せよ

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「チャレンジャー」の要となるインサイトや、顧客一人ひとりに適応するメッセージ、主導権を握るためのやりとりは、営業のその場で思いつくものではない。事前の綿密な、それも販売員個人ではなく、組織を挙げての準備と計画が必要となる。
そのために必要なもののひとつが、営業マネジャーのスキルアップだ。販売員たちを「チャレンジャー」にするためには、マネジャー自身も「チャレンジャー」としての資質を持たなくてはならない。そのうえで営業マネジャーには、販売員に「既知」のスキルを伝授するコーチングと、「未知」を開拓する営業イノベーションの能力の両方が必要だ。営業イノベーションは、顧客の状況を調査し、新たな価値を創造し、成功事例を広く社内に共有することで実現する。今やマネジャーに求められているのは適切な人材分配だけでなく、販売員と一緒になって取引を進めることなのだ。
さらに、マーケティング部署との協同も必須である。これまで営業部門とマーケティング部門は非協力的だというのが定説だったが、マーケティング部門の力なくしては、顧客を動かすインサイトを見出すことはできない。そのためにまずマーケティング部門は、営業に「顧客中心」を命じることを止めるべきだ。間違った顧客中心主義は、営業の立場を値引き役か御用聞きに貶めてしまう。まずマーケティング部門自ら「インサイト中心」主義となり、「顧客はなぜ、他社ではなくわが社から買うべきなのか?」の問いに答えを持とう。
「チャレンジャー・セールス・モデル」は、一朝一夕では完全導入に至らないものである。しかし実行すれば、確実に変化を得ることができる。組織全体の新しいオペレーションシステムとして、今すぐ行動を起こすべきだ。

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著者紹介

  • マシュー・ディクソン/ブレント・アダムソン

    世界有数のアドバイザリー会社CEBにおいて、マシュー・ディクソンはエグゼクティブ・ディレクターを、ブレント・アダムソンはマネージング・ディレクターを務める。CEBは、数千社におよぶクライアント企業の成功事例、先進的な調査手法、人材分析を組み合わせて、経営陣に事業変革のための知見やソリューションを提供。その独自アプローチで、世界中のエグゼクティブから注目を集めている。

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