1冊10分で読める本の要約

2017.03.03

ワーク・シフト

孤独と貧困から自由になる働き方の未来図

20170303 summary

著者リンダ・グラットン 著/池村 千秋 訳

ページ数402ページ

出版社プレジデント社

定価2,100円(税込)

出版日2012年07月28日

Book Review

20年後、私たちの働き方はどのように変化しているのだろうか。朝九時に出社し、夕方の5~6時に退社するといったこれまで当たり前だったスタイルは20年後の未来でも主流なのであろうか。
1990年頃の世界と比較すると、2013年の現在は驚くべきほど変化している。特にその変化が目覚ましいのがテクノロジーの分野だ。1990年といえば、まだ携帯電話がほとんど普及しておらず、インターネット回線が引かれているオフィスもほとんどない世界であった。クライアントとは電話や手紙でやり取りをしていた時代だ。それが今では地球の裏側のチームともテレビ会議が行え、資料のやり取りもメールで簡単に行うことができるようになった。いったい20年後はどのような働き方をしているのだろうか。
本書は、テクノロジーの進化だけではなく、グローバル化、エネルギーなど五つの要素、32の現象から未来の働き方を予測している。描かれる暗い未来を「漫然と迎える未来」、明るい未来を「主体的に築く未来」と表現し、2025年に生活する登場人物の未来の生活をリアルに語っている。そのうえで、明るい未来を築くための我々が改めるべき発想を「3つのシフト」として論じている。
2025年、働き盛りである若い世代に一読の価値がある。本書で語られる通り、未来の働き方はこれまでの常識が全く通用しないものとなるだろう。今後の人生の指針を考えるためには必読書である。

要約本文

なにが働き方の未来を変えるのか? ― 未来を形づくる5つの要因

要因1 テクノロジーの進化

いま途方もなく大きな規模の創造的・革新的変化のプロセスが本格的に始まろうとしている。未来になにが待っているかを知るためには向こう数十年を形づくる5つの要因について考える必要がある。その一つ目の要因がテクノロジーの進化だ。テクノロジーは常に、仕事のあり方と人々の働き方に大きく影響してきた。
特にこの要因については、①テクノロジーが飛躍的に発展しコストが急落すること、②世界の50億人がインターネットで結ばれること、③地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになること、などといった現象に注目すべきだ。

要因2 グローバル化の進展

二つ目の要因はグローバル化の進展である。グローバル化の流れが本格化しはじめたのは、第二次世界大戦後のことだ。1944年のブレトンウッズ会議で世界銀行とIMFが設立され、本当の意味での国際貿易の制度が誕生したのである。
特にこの要因については、①24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現したこと、②中国・インドの経済発展が目覚ましく人材輩出国としても台頭してきていること、③世界の様々な地域に貧困層が出現すること、などといった現象に注目すべきだ。

要因3 人口構造の変化と長寿化

社会の人口構造と仕事の世界の間には、切っても切れない結びつきがある。具体的には、世代、出生率、平均寿命の三要素の影響が重要である。
特にこの要因については、①Y世代の影響力が拡大すること、②寿命が長くなり、ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎えること、③国境を越えた移民が活発になること、といった現象に注目すべきだ。

要因4 社会の変化

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私たちの意識がどう変化するかを予測することは困難だが、テクノロジーの進化など表面的な部分こそ変わっても、マズローが示したように人間の根本的な欲求に関する性質はおそらく変わらないだろう。
特にこの要因については、①家族のあり方が変わり規模が小さくなること、②女性の力が強くなること、③バランス重視の生き方を選ぶ男性が増えること、などといった現象に注目すべきだ。

要因5 エネルギー・環境問題の深刻化

私たちが未来にどういう働き方をするかは、エネルギーをどの程度利用できるか、そしてエネルギーの利用が環境にどのような影響を及ぼすかという点と密接に結びついている。エネルギー問題と環境問題は、第一次産業革命以降、悪化し続けてきた。2030年頃までには、エネルギーと気候変動の問題が世界の最重要課題に浮上しているはずだ。
特にこの要因については、①エネルギー価格が上昇すること、②環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れること、③持続可能性を重んじる文化が形成され始めること、といった現象に注目すべきだ。

「漫然と迎える未来」の暗い現実

いつも時間に追われ続ける未来

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時刻は午前6時。目覚まし時計の音で目を覚ます直後、寝室の壁に映し出された300件のメッセージが飛び込んでくる。ほどなく、この日最初のホログラム電話がかかってくる。午前7時、人工知能アシスタントが一日の予定を教えてくれる。あと2時間で世界中の社員を結んだ会議が始まる…
この未来では、すべての活動は細切れになり、世界中の同僚と仕事し、世界中のライバルと競い合う。毎分毎分処理すべき課題がぎっしりと詰まるのだ。この未来は、主に通信端末などのテクノロジーの進化と、24時間休みのないグローバル化が要因となり、描かれるものである。

孤独にさいなまれる未来

朝目を覚ますと、自宅内のオフィスに移動する。インドの医師であるローハンは、中国からの依頼で脳内の出血を止める手術を依頼された。手術室のカメラが映した立体映像をもとにローハンはロボットを操作する。次はチリのチームとの打ち合わせ…そうこうしているうちに慌ただしい一週間が過ぎた。今週はほとんど自宅の外にでていない。
2025年の世界では、ほかの人と直接対面して接する機会が減る。その結果、気軽な人間関係がもたらす喜びを味わえなくなる。この未来は、主にエネルギー価格の上昇による移動費の上昇、核家族化、離婚の増加など家族のあり方の変化などが要因となり、描かれるものである。

繁栄から締め出される未来

2025年オハイオ州に住むブリアナは近所のハンバーガー店で午後だけアルバイトをしている。家に帰ると、もっと長く働ける職場を探すのだが、魅力的な仕事は、自分よりも教育レベルが高い中国人やインド人の若者との競争に勝たなくてはならならず、結果は芳しくない。
これまでの世界では、どこで生まれたかによって、ある人が経済的にどのくらい成功できるかは概ね決まっていたが、その状況は2025年には変化しているはずだ。才能とやる気と人脈が経済的運命の決定要因となり、勝者総取りの社会となる。この未来は、主にテクノロジーによる雇用喪失、中国・インドなどの新興国の台頭などが要因となり、描かれるものである。

「主体的に築く未来」の明るい日々

コ・クリエーションの未来

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5つの要因はすべて、暗い未来を生み出す可能性がある半面、明るい未来を生み出す可能性も秘めている。舞台は2025年ブラジル、朝6時、ミゲルはこれから始まる一日に思いをめぐらせて、期待に胸を膨らませる。新しいアイデアを考え手ごわい問題を解決する仕事がまっている。ミゲルは都市交通に強い関心があり、仲間たちと一緒にインドの交通の課題に取り組んでいる。ミゲルはイノセンティブを通じて課題を認識し、まず少人数のグループでアイデアの中核を練り上げ、もっと多くの人の参加を呼びかけるマス・イノベーションに取り組んでいる。
2025年、イノベーションはコラボレーション的・ソーシャル的性格が強くなり、多くの人の努力が積み重なって実現するものになる。この未来は、50億人がフェイスブックなどのSNSで結びつくグローバル化、またソーシャルな活動の活発化が要因となり、描かれるものである。

積極的に社会と関わる未来

アメリカの小売企業で働くジョンはバングラデシュのチッタゴン近郊でボランティア活動を行っている。2025年、会社の所属部署の第2オフィスを村に作り、ジョンは家族を連れてやって来た。ジョンの子供たちはオンライン上でほかの生徒たちと一緒に勉強し、その後は両親と援助活動を手伝っている。ジョンにとっては小売企業の管理職とチッタゴンの援助活動をブレンドすることが人生の重要な一部となっている。
ジョン一家の大きな特徴は、社会活動の比重が高まる結果、仕事、社会奉仕、育児、地域活動など、生活のさまざまな要素のバランスが取れていることだ。この未来は、ジョンのようなY世代の台頭、バランス重視の生き方を選ぶ男性が増えることが要因となり、描かれるものである。

ミニ起業家が活躍する未来

シュイ・リーはかつて中国で縫い子を雇い自前の刺繍店を開いていたが、2025年の今は自分の店をもっていない。香港大手リー&フンのパートナーとなったからだ。シュイ・リーは週に2、3着のドレスをつくっている。ドレスの作成は様々な工程があるが、パートナー全員とオンラインで結ばれており、分単位で進捗を確認することができる。
2025年には、世界中で何十億人もの人たちがミニ起業家として働き、ほかのミニ起業家とパートナー関係を結んで、共存するエコシステムを築くようになる。ミニ起業家たちはたいてい、自分が夢中になれる対象を仕事にしている。この未来は、テクノロジーの進化による生産性の向上、中国の経済成長などが要因となり、描かれる未来である。

働き方を<シフト>する

第一のシフト ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

明るい未来を切り開くためには、これまでの固定観念、知識、技能、固定パターン、慣習などを根本からシフトする必要があると考えている。
未来の仕事の世界で成功できるかどうかは、その時代に価値を生み出せる知的資本を築けるかどうかだ。とりわけ、広く浅い知識や技能を蓄えるゼネラリストを脱却し、専門技能の連続的習得者への抜本的なシフトが必要だ。終身雇用の契約が崩れ始めたいま、ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えている。「なんでも屋」はウィキペディアやグーグルアナリティクスなど、知識や分析を手軽に提供するテクノロジーと競わなければならない。
ほかの専門技能より高い価値を持つ技能は、①その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること、②その技能の持ち主の希少性が高いこと、③その技能の模倣が困難であり、機械によっても代用されにくいこと、という条件を兼ね備えているものだ。

第二のシフト 孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ

世界中の人々が結びつく時代の恩恵に最大限浴するためには、協力とネットワークとイノベーションについて、根本から発想をシフトする必要がある。昔は人的ネットワークが自然に形成されるのに任せておけばよかったが、今後は意識的・主体的な選択と行動が不可欠となる。関心分野を共有する少人数のブレーン集団である「ポッセ」、多様なアイデアの源となる「ビッグアイディアクラウド」、そして安らぎと活力を与えてくれる「自己再生のコミュニティ」を築くために、意識的に努力しなくてはならない。強固な人間関係をはぐぐむことができれば、大きなエネルギーを得られる。その際に注意すべきは、物質的な豊かさを重んじるあまりに、成長と意義と友情をないがしろにしないことだ。

第三のシフト 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

第三のシフトは未来に向けて求められる三つのシフトのなかで最も難しい。やりがいと情熱を感じられ、前向きで充実した経験を味わえる職業生活への転換を成し遂げ、「仕事の最大の目的はお金を稼ぐこと、人生の目的はそのお金で消費すること」という発想から脱却しなくてはならない。このシフトで目指すのは、すべての時間とエネルギーを仕事に吸い取られる人生ではなく、もっとやりがいを味わえて、バランスの取れた働き方に転換することだ。
シフトを行うとは、覚悟を決めて選択することだ。ボランティア活動や長期休暇を取る代わりに高給を諦める選択をしたり、リスクを承知の上でミニ起業家へ転身したりする。昔は企業が社員の代わりにすべてを決めていたが、今後は自分の働き方を主体的に選ぶケースが増える。自分自身と家族、そして社会全体のために、経済の活力と社会の安定のバランスをどのように取りたいのか。そのバランスを実現するために、どういう選択を行うべきなのか。こうした視野の広い議論をすべき時期に来ている。

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著者紹介

  • Lynda Gratton(リンダ・グラットン)

    ロンドン・ビジネススクール教授。
    経営組織論の世界的権威で、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとり。ファイナンシャルタイムズでは「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞され、英エコノミスト誌の「仕事の未来を予測する識者トップ200人」に名を連ねる。組織におけるイノベーションを促進するスポッツムーブメントの創始者。『HotSpots』『Glow』『Living Strategy』など7冊の著作は、計20ヶ国語以上に翻訳されている。人事、組織活性化のエキスパートとして欧米、アジアのグローバル企業に対してアドバイスを行う。現在、シンガポール政府のヒューマンキャピタルアドバイザリーボードメンバー。

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