コラム

2017.04.21

営業マンに値引きの裁量を与えてはいけない

営業活動では、シェア確保やノルマ達成のために、安易な値引きをしてしまうことが多い。しかしこれでは、会社に残るはずの利益がこぼれ落ちてしまう。『儲かる会社は人が1割、仕組みが9割』の著者が、値引きをしないで売上げを伸ばす方法を伝授する。

営業マンに値引きの裁量を与えてはいけない

“安易な値引き販売”は毒まんじゅうだ

そもそも利益の源泉には、販売価格の設定が大きく影響します。営業マンが勝手に値引き販売をするのは、利益が漏れる以前の問題として、利益を「食っている」状態です。

たとえばトラックなどの販売では、新車が売れると、メーカーから販売台数に応じた報奨金が出ます。営業マンは報奨金の額を知っているので、それを織り込んで目いっぱい値引きに応じます。業界全体が同じ販売システムですから、シェア確保のために1台でも多く売ろうとしてしのぎを削っているのです。

そのため、いかに値引きをして、価格で勝負するかが当たり前になっており、結果的には原価はおろか、報奨金まで吐き出してしまい、あとの経費は修理を担うサービス事業部が埋め合わせをしているような状態です。

営業マンにとって、値引き販売ほど楽なものはありません。顧客との交渉よりむしろ、社内の管理者との価格交渉に汗をかく営業マンがいかに多いことでしょうか。

営業マンにはノルマがありますし、管理者はシェア競争に勝たなければなりませんから、両者とも会社の損益よりも自分の立場のほうを重視してしまいます。その結果、営業部門が一丸となって、「競合他社に負けないために」という錦の御旗の下に、競って値引きに応じてしまうのです。

しかしそれは、本来の営業の姿ではありません。このような荒っぽい営業部が社内でいちばん主力の座を占めているのでは、他部門にも影響し、経営も放漫経営になってしまいます。

安売りを禁止すれば、売上げは伸びる!

私は、この業界の常識を破り、逆に報奨金だけは残るような価格政策を考えました。

そもそも、値引きを求める顧客は、他社にも同様に値引きを迫って「あっちはいくらと言っているぞ」と、見積もりを競わせて、どこでもいいからいちばん安い会社から買おうとしています。

そんな顧客に無理な値引きをして安く売ったところで、収益性の高い車検整備の際にも「どこでもいいから、いちばん安いところで」と考えるはずです。新車を安く売って、しかも自社がいちばん儲かる車検にはつながらない可能性が高い。いわば、「儲からない顧客」なのです。

そんな顧客にはさっさと見切りをつけ、多少高くても買ってくれる顧客に、しっかりとアフターケアを行えば、車検獲得の確率も上がるはずです。

そこで、ある日を境に、値引き販売をいっさい禁止しました。当然、現場からは苦情の嵐です。

「値引きしないで、どうやって他社に対抗しろというのですか」
「急に値引きしなくなるなんて、顧客が納得するはずがありません」

しかし、ここは社長の「鶴の一声」で強引に進めました。利幅が一定の限界を超える値引きをする場合、社長決裁を受けなければならないことにしました。

こうした「荒療治」は強引に行わなければなりません。民主的に会議で検討するのではなく、すべて社長が責任をとるという姿勢を見せ、とにかく値引き以外の交渉力でがんばらせるのです。

はじめは文句を言っていた営業マンも、値引きはできないと悟ると、なんとかしようと真剣に誠意をもって交渉するようになりました。その結果、新車の売上が落ちるどころか逆にシェアが上がったのです。

今までの営業マンは、いかに競合他社の提示した価格を知るかが仕事でした。極端な例では、はじめから「競合先の見積もりから○○円値引きします」といった会社の利益を食い物にする営業です。

それが値引きという強力な武器を取り上げられたことで、買ってもらうための工夫を自然にするようになり、誠意をもって接するようになりました。価格オンリーの営業から性能やランニングコスト、安全といった顧客の知りたいニーズに応える営業に変わりました。そして、顧客との間に信頼が生まれたのです。

信頼してくれる顧客は、リピーターになってくれます。それが、販売台数が増えた最大の理由です。


出典:ダイヤモンド社 書籍オンライン Copyright © 2016 DIAMOND,Inc. All rights reserved.

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